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当時私は、アメリカの医療保険制度に詳しくなかったために、留学先の大学で一般的といわれる保険に加入した。
留学中であったために、収入は年3万ドル弱であったのだが、保険料として年間数千ドル支払うことになった。
また、医療機関を受診したときに、最初に保険に入っているかどうかをしつこく追求されたことにもびっくりした。
ただ、アメリカでは保険に入っていない(入れないともいえる)人が4600万人もいることを知ってからはさもありなんと、納得してはいる。
次に出産についてである。
私の友人の妻は、経産婦ではあったが、費用が高いために出産日に即帰宅した。
保険の種類によっては償還されるものもあるが、それでも1日の費用は計30万円弱におよんだそうである。
これは普通のことだということであった。
この後も、よい面悪い面を含めアメリカ医療との比較を随所にしていくが、基本としてアメリカ医療が高額だということを前提にしておいてほしい。
患者の満足度が高いアメリカアメリカの医療制度は大きく変化しているが、保険がない人が4600万人もいるとか、値段が高いとか、そういうことで文句をいっている人は多いものの、受けられる医療に関しての満足度は意外と高かった。
日本は、医療の結果としての寿命などではいい成績なのに、満足度が低いのだ。
その理由のひとつに、説明が丁寧ということがある。
アメリカの場合は、一人の医師が一人の患者に30分ぐらい時間をかけている。
なぜそんなことができるのかというと、診る患者数が圧倒的に少ないからだ。
たとえば教授でも1日の外来で患者が10人とかのレベルだ。
10人なら、一人30分としても計300分だから、9時に始めれば途中で食事をしながらでも、2時とか3時には10分終わる。
ところが日本の場合、忙しい病院だと70人、80人を一人の医師が1日で診察する。
「患者をたくさん診る医師がいい医師だ」という考え方が経営者側にあるので、私立大学病院などでは100人近くの患者を1日で診察する教授もいる。
つまり診察する数が全く違うのだ。
ここを直さない限り、3分診療、最近は3分では長いとはいうものの過密な診療状況は改善されないだろう。
30分の診療時間があるとしたらもうひとつ重要なことは、実際に診察時間が30分になったときに何を話すかということだ。
日本人の場合には、たぶん30分間も医師としゃべることはなかなかできないだろう。
これはアメリカでも同じではないかと思って、アメリカの友人の医師に「30分間も患者と何をしゃべるんだ」と聞いてみた。
すると、患者が結構プライベートなことを話していることがわかった。
アメリカは、カウンセリングの考え方がたいへん充実している。
医師には守秘義務があるので、身内に関することなどカウンセリング的な話までしているらしい。
もちろん医師はカウンセラーではないから、プロのカウンセリングはしないが、会社での悩みとか、いろんなことを患者が話しているうちに、30分ぐらいの時間はすぐに経ってしまう。
また、受診頻度が日本と違って少ない。
多くて1ヵ月に1回とか、場合によっては2ヵ月、3ヵ月に1回しか受診に来ないから、病気以外の話もいろいろして相談にのってもらう、そういう位置付けになっているようだ。
医師と患者の関係は、日本は相変わらず上下関係になっているが、アメリカはカウンセリング的な感じで対等だ。
だから診療を受ける人はペイシェントではなくて、クライアントになる。
日本の場合には、一方では医師も数をこなさなければいけないという責任があるが、患者にしても、何となく気詰まりになって席を立ってしまう。
3分診療といってもお互いさまの部分もあるのではないだろうか。
ただ、私はここでアメリカ医療を礼讃しているわけではない。
何度も出てくるが、医療費という視点からみるとアメリカの医療は非常に高い。
で述べたように、総計で5倍の医療費を使っているのだから当然ともいえるが、身近な額になるとその差に愕然とする。
えば、子宮筋腫の手術の2日入院で100万円の請求とか、出産費用が160万円とか、急性虫垂炎の1日入院で210万円などである。
もちろん入っている保険によって、これらはカバーされるものとされないものがある。
セカンド・オピニオンの意味さて話は変わるが、最近よく話題に出る、患者が主治医以外の医師から情報を集める「セカンド・オピニオン」について考えてみよう。
セカンド・オピニオンを求める場合には、どのくらい時間がかかって、どのくらいコストがかかるかというあたりに大事なポイントがある。
しかし、その前に考えておかねばならないことは、いま日本でいわれているセカンド・オピニオンの一番の欠点は、情報を求める医師に対して、患者が何も情報を提供することなく質問しているということだ。
私がセカンド・オピニオンを聞かれる場合でも、「ある医師がこんなことをいっているんですが、どう思われますか」という質問のされ方が多い。
たとえば「胆管がんの末期で転移を多く起こしているのでもう手術はできないと医師がいっているけれど、何とかならないか」という具合である。
このレベルの質問だと、具体的なことが全然わからないから、答えようがないといえる。
セカンド・オピニオンが充実するためには、データ、つまり患者の診療情報。
カルテなどが必要だ。
ある程度患者のデータがその医師に伝わらないと、医師は10分な説明ができないし、正確なことはいえない。
現状のままのセカンド・オピニオンでは、あたりさわりのない意見、上記の例でいえば「そうですね、転移もしてかなり進行しているひどい状況だったら手術は無理だろうね」という程度のセカンド・オピニオンになってしまう。
これでは気休めにはなっても、あまり意味があるとはいえない。
アメリカでは全く違っていて、医師はデータをみて話をする。
実際にカルテがあるから、医師としても自分だったらこうするということがいえる。
それがたぶん真のセカンド・オピニオンだと思われる。
ただ、これを本格的にやろうとすると、相当の時間が必要になる。
カルテの厚さにもよるが、医師が必要とする時間は1時間ではかなり厳しくて、2時間近く必要だろう。
まずカルテをみる時間が必要だ。
だから患者と直接に対話する時間は30分か1時間かもしれないが、それ以前にカルテをチェックするために時間がかかるので、やはり延べ時間に基づいた請求額は高くなる。
しかしそうでなければ、気休めのセカンド・オピニオンになってしまう。
稀に、データを持って相談にいくという人がなかにはいると聞くが、そういうケースが増えてくることを期待したい。
次に、セカンド・オピニオンの実態について、N大学医学部医療情報部でアンケートをとった結果を紹介しておこう(「医療と社会」2002年に発表)。
これは2001年春に、日本病院会会員病院(2588施設)を対象に当該病院の事務長に回答を依頼する無記名式郵送質問紙調査を行ったものである(有効回答病院数は743)。
この結果では「自院に受診した患者が、他院にセカンド・オピニオンを求めた」件数が全体で881件、「他院の患者が、自院にセカンド・オピニオンを求めた」件数が1763件であった。
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